今までたくさんの試合のベンチコーチをしてきましたが「相手のラバーがしっかり腫れていなくて、まるでアンチスピンラバーのようにボールがネットに直行した」のを初めて見ました。
前5節グレンツァオ戦の大逆転勝利の興奮も冷めないうちに中三日で第6節ザーリュブリュッケン戦が行われました。
アレグロが股関節の手術をしたため、今節はキリアン・フィリップ、そしてまだ右脇腹の痛みが回復していないバースティーの3選手での戦いです。
ザーリュブリュッケンは豪華メンバー。世界のトップに上り詰めたダルコ・ヨルジッチ(スロベニア/WR10位)フランジスカ(ドイツ/WR14位)ニィンティック(ベルギー/WR86位)ポランスキー(チェコ/WR96位)神巧也(日本・青森出身/WR160位)。正直、相手に穴はありません…
今節は調子の上がってきたキリアンがエース。ただフランジスカとは当たりたくない。2番がフィリップ。できればフランジスカに当てたい。万全の体調ではないバースティーが3番。
オーダー交換が終わり、相手エースはポランスキー。2番にフランジスカ..キリアンが当たってしまいました..。3番はニュインティック。ダルコは解説席に行き実況中継。神は出場せずベンチ。
ほんの小さなチェンスがあるとしたら、プレッシャーのない場面ではとにかく強いポランスキーが、プレッシャーのかかる試合だとビビって半分も力が出せない時が多いこと。ただそこまで試合を持っていけるか..。
19:00試合開始
1番 フィリップ vs ポランスキー。前節のクビック戦に引き続きYGサービスに対するレシーブの打開策が見つけられないフィリップ。対するポランスキーは伸び伸びと実力を発揮し1対3で敗退。
2番 キリアン vs フランジスカ。昨シーズンのブンデスリーグでは -5,-5,-5で敗退しているキリアンが最も当たりたくない相手です。とにかくフランジスカの猛烈に切れた真下回転とYG斜め下回転サーブが取れない。入れるだけでは強烈な3球目の餌食になる。かといって無理をするとレシーブがコートに入らない。
「コージ、どうすれば良い?」とキリアン。
「ラリーになって勝てなかったらしょうがない。まずは
レシーブだけに全神経を費やそう。真下回転はベストはストップ。難しかったらミドルにハーフロングで低くレシーブ。そのボールはバックでキリアンのフォアにドライブしてくる。真下回転でもいけると思ったらチキータ。ハーフロングで台から出てきてフォアで急にドライブしようとすると打点が落ちて狙われるから、そのままバックドライブでレシーブする」
「YG斜め下は、まずサーブの高さと相手のモーションを見る。バウンドが高かったらフォアフリックで押す。フォア前に来ると見抜けたらチキータをストレートに打つ。サーブが低かったら直接のネットミスだけしないで、1球ブロック狙い。レシーブミスをしなければ少しはチャンスが来るから」
「あ、あと浮いたボールをフォアコーナーにフルスイングしてカウンター取られるのだけは止めようね。フランスは手が長いから。絶対にミドル!」
「これが出来ても勝てなかったらしょうがないよ」
とにかくレシーブの冴え渡ったキリアン。真下回転を攻略するとフランジスカは次のYG斜め下回転にチェンジ。最初の2本は直接ネットミスをしてしまいましたが、徐々にレシーブができるようになりフランジスカにもプレッシャーがかかってきます。サーブからの展開でも今日は突破口が見つけることができ、難敵相手に3対1での大金星の勝利!
ダブルスに回ると今日はアレグロ抜きなので正直厳しい。回復していないバースティーはどれだけできるのだろうか?勝って4番のポランスキーに大きなプレッシャーを与えることができるのだろうか…
3番 バースティー vs ニュインティック。国際情勢の関係でロシアリーグでプレーしていたニュインティックがブンデスリーグに戻ってきました。「かなり強いな..あれ?試合前の2分間の練習でニュインティックのバックの赤のラバーがちゃんと貼れていないみたいな..本人もかなり焦ってる..アンチラバーみたいな飛び方してる。まぁ試合が始まれば問題ないだろうな..」私の心の声です。
第1ゲーム1対0でニュインティックが打ったバックドライブがネットに直行。おいおいマジかよ。5対4でのチキータがネットに直行し、審判にラケットを交換したいと申し出るニュインティックですが、ルール上ラケットの破損とかでなければラケットは交換できません。
「マジ!チャンス??」
「バースティー。相手のバックに下回転を送ると回り込んでフォアドライブできるから、とにかく回転量は多くなくても上回転ボール、チキータとかフリックとかをバックに送って、もう一回バックのラバーを使わせる。だとコートに返ってこないよ」
ただ、最後はフォアのラバーをバックに反転してきたので逆に回転の変化があり試合がもつれましたが、流石バースティーは最後の1球でしっかり対応し3対1で勝利!
チャンス!
4番 エース対決のキリアン vs ポランスキー
「コージ、WTTでも当たったけど本当に隙がなくやりにくい。どうする?」
「まず、彼には凄いプレッシャーがかかっている。そういう場面でのポランスキーは別人のようになるから、バックにロングサーブ2回連続出しても良いよ。たぶん空振りが始まるから。サーブはフォア前とミドル前に下と横を混ぜながら入る。レシーブはフォアのサイドアウトを混ぜる。フランジスカと違い、チャンスはフォアコーナーに打って大丈夫。1本ブロックが返ってきたらストレートにコースを変えれば良いよ。大丈夫。負けはないから」
予想通り第1ゲームは11対3。途中、タイムアウトを取り積極性が戻ってきたポランスキーでしたが、キリアンに「相手は向かってきてるぞ!キリアンもリスキーに行って良いよ」と勝負をかけさせ3対0での勝利!
チームも3対1で名門ザールブリュッケンに大金星をあげました!
【 ハイライト動画です 】
多くの試合のベンチコーチをしてきましたが、初めて遭遇した珍事でした。がしっかりと少ないチャンスをモノにしました。
「あなたが出てたら今日の勝ちはなかったな!」と神選手に!
またアキト友達で1歳年上のマティアス(ザーリュブリュッケンの第2チームの選手)は、「俺の出番だったな。俺が出ていればクニックスフォーヘンに勝てたのに」と言っていたそうです笑
ハイライトを見てお気付きの方もいますでしょうか?解説席にいたダルコがいつのまにかベンチに座っていました。
帰宅は日付が変わり朝3:00。これでチームは3勝3敗の6位に浮上。
次節から前半戦の最終節まで宇田選手が合流します。キリアンもフィリップも状態が良いので「宇田選手頼み」のチームではなく、全選手で勝利を重ねながらチームの勝利につなぎたいと思います。
前回のグレンツァオ戦はホームで大盛り上がりでしたが、今回は平日のアウェイのためサポーターもほとんど来ませんでした。始まる前から厳しいと思われていたと思います。我々は静かに勝利を噛み締めました。サポーターの皆さんと喜びをともにできるホームでの試合のありがたさを感じます。
11月27日(日)にホームで行われるデュッセルドルフ戦のチケットは既に完売らしいです。日本からも豪華なゲストが応援に来てくれます。
楽しみですが、私が張り切りすぎても空回りする時があるので、落ち着いて準備をしたいと思います。
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