2番のベンス選手は、アントン選手(スウェーデン/WR125位)得意のアップサーブを見切ってパワーチキータを決め試合を有利に進めますが、アントン選手が下回転に変えてきた時に無理なチキータで失点をしてしまい、ゲームカウント1対1に。「ベンス、アントンが下回転に変えてくるのは当たり前だけど、これはラッキーだよ。しっかりとフォア前にストップしていこう。台上の勝負なら君のテクニックの方が優っているから自信を持っていこう」
期待に応えたベンスが3対1で勝利し、キリアンにタスキをつなぎます。
3番はキリアン選手vsカールソン選手(スウェーデン/WR30位)。3対0での勝利といきたいところですが、カールソン選手は強い。デュッセルドルフはエースでティモ・ボル選手、3番にカールソン選手が勝利への鉄板オーダー。大きな打ち合いなら五分に持っていけますが、台上の細かいプレーからの攻守に勝るカールソン選手に0対3で敗退。そして4番のベンス選手もティモ・ボル選手には歯が立たず試合は最終ダブルス勝負に。
実は今シーズンの集大成として最後に試してみたかったのが及川・キリアンのダブルスでした。今シーズンのダブルス成績は散々な結果でした。体格の大きなヨーロッパ選手同士のダブルスはどうしても【大雑把】な試合になってしまいます。延々とストップ対ストップを繰り返すか、一か八かでフリックやチキータをしていくかの繰り返しでコンビネーションプレーにはほど遠い内容でした。やはり一人の選手が台上の細かいプレーやフットワークを生かしての【生きたつなぎボール】を使いパートナーの長所を発揮していく。そうなれば【グット・ハーモニー】が出来上がってくると感じていました。及川選手がエースで出場するとダブルスには出場できませんが、台上に切れ込んで行くスピードがあり、ラリーでも一本質の高いボールでつなぐことに秀でている及川選手とパワーのあるキリアン選手のダブルスは【絶対に合う】と確信していました。そして来シーズンはシュテガー・バースチャン選手が加入することでこのダブルスが強ければ、クニックスホーフェンの夢が叶うはず。
及川選手とキリアン選手は4年間一緒にプレーしていますが、お互いでダブルスを組んだことはありません。しかし、コミュニケーションはバッチリなので試合中に噛み合ってくれば必ず強敵に勝てる…
第1・2ゲームまでは台上で先手は取るものの得点には結びつかず6対11、6対11で落とし第3ゲームも0対3。ここでダイムアウト。
「及川・キリアン苦しいけど見えてきたよ。まず及川が台上に
切れ込んで先手を取りキリアンのパワーボールに結びつけていこう。及川がチャンスメーク、キリアンが押す。これが基本の役割分担だ。次に相手が台上を深く押し込んできたら自分たちはストレートにボールをつなぎクロスを待つパートナーを信じる。最後にラリーになったら1・2本では終わらない。及川、キリアン、及川、キリアンと何度も必死にボールに喰らいついて、やっと一点になる。1ゲームを取り返せば必ずゲームオールになる!」
このタイムアウトから生き返った二人は怒涛の連続得点を挙げ第3ゲームを取り、第4ゲームも5対9から執念の大逆転!試合はフルゲームに突入!
最終ゲーム、5対3でチェンジエンドをし、そこからは今シーズンの集大成を見せるプレーを連発!二人のコンビプレー、及川選手の回り込み一撃、キリアン選手の横入れまで飛び出し9対3とリード!
デュッセルドルフが負ける…. 静まり返った緊張感のある空間で…
「ポン!」
私の後ろで大きな音がしました。なんと試合が終わっていないのにアンディーがシャンパンの蓋を開けていました笑。
「アンディーまだ終わっていないよ。ここからの一点が遠いんだ…」心の中で呟きながら試合を見守りましたが、二人の勢いは止まりませんでした。
【ハイライトビデオです】
今シーズンの集大成を見せる。選手も、そしてヘッドコーチとしての私も。目標が達成できました!ただ、
痺れました笑!
昨シーズン、初の一部挑戦のクニックスホーフェンがこの聖地のコートでデュッセルドルフに勝利した瞬間にコートに飛び込んできた彼が、期待を裏切らずやはり登場しました。
試合が終わり興奮冷めやらぬまま、昼食に引き続き日本食「RIKA」で夕飯を兼ねての祝勝会。1日で餃子数十個とラーメン2杯を食べてしまいました。
私たちの居場所を突き止めたシュテガー・バースチャン選手も駆けつけてくれました。試合の話は尽きることがなく…
翌日オマーンオープンに出場のため移動する及川選手をフランクフルト駅前のホテルに送り届け、クニックスホーフェンに戻ったのが… 朝3時。
私自身の卓球人生でも記憶に残り続けるであろう大きな1日でした。
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